スポーツ社会学研究
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特別寄稿
スポーツと経済開発
―バングラデシュの場合―
マンデル J.R
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2012 年 20 巻 2 号 p. 3-11

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抄録

 スポーツ参加が増えることが開発を促進するという主張を裏付ける証拠はなきに等しい。しかしながら、スポーツでの発展は、人々が楽しめる活動に接する機会を個々に増やす点に価値がある。それゆえ、スポーツでの発展は、投資よりも消費行動に近いものと考えられる。
 本論文では、スポーツを剰余をもたらす投資行動として扱うのではなく、バングラデシュでのスポーツを従属変数とみなしている。横断的なデータ分析により、バングラデシュの経済が発展途上であるから、その国でのスポーツ参加も低レベルに留まっているのだという仮説が検証され、またこうした機能不全が男性より女性に多くみられることが明らかになった。
 データを吟味することで、バングラデシュの貧困こそが元凶であって、もしこの国が近代化されれば、スポーツ参加が増加し、性的不平等が低減されることが示唆された。
 近年、バングラデシュでは衣料・アパレル産業が成長している。しかし、生産性は低く、賃金も低いままである。したがって、スポーツ参加を活性化するにも、性的不平等を低減するにも、それは役立っていない。
 スポーツ参加を増やすにも、女性のエンパワメントを実現するにも、バングラデシュで必要なのは、経済の近代化に成功することである。彼らは技術力を高める必要がある。そうすることで、かの国の人々が中等レベルの教育を受ける機会を大幅に拡大しなければならない。

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© 2012 日本スポーツ社会学会
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