スポーツ社会学研究
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原著論文
地域スポーツを支える条件の戦後史
―指導者、とくに職員問題に注目して―
尾崎 正峰
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2012 年 20 巻 2 号 p. 37-50

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抄録

 地域スポーツ振興のための職員体制の確立は権利としてのスポーツの保障のための重要な要素であるにもかかわらず、スポーツ基本法に職員に関する規定が盛り込まれなかったことは重大な問題といえる。また、研究面でも、職員の役割を実践に即して歴史的、系統的に考察することがこれまでほとんど手をつけられてこなかった。
 こうした問題関心の元での本稿のねらいは、第一に、第二次世界大戦後の文部省、文部科学省のスポーツ政策関連文書における指導者、とくに職員に関する政策構想を検証することにある。この検証を通して、戦後初期から職員の重要性の指摘は繰り返し公にされていることを見ることができるが、法的、制度的には現在まで不十分なままである。第二に、市町村自治体レベルでのスポーツ振興の実践事例を検証するとともに、職員の連携に基づく集団討議によって提起された職員像を検討することである。検討の対象は、1970年代以降、専門職配置を実現した自治体の事例、専任として関わる職員の尽力によって地域スポーツが活発に展開している事例などで、この検討を通して職員の意義と役割を明らかにした。
 最後に、現在、公務員の削減という困難な状況にあるが、問題解決のため、1970年代以来の実践をあらためてとらえ返す中から、職員の重要性を再度明らかにしていくことが求められる。

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© 2012 日本スポーツ社会学会
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