スポーツ社会学研究
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原著論文
国際開発とスポーツ援助
―スポーツ援助の動向と課題―
小林 勉
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2014 年 22 巻 1 号 p. 61-78

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抄録

 近年、国連をはじめとする各国際機関でスポーツを貧困削減へ向けた、いわゆる「開発」のプロセスの中で活用していこうとする「開発を後押しするためのスポーツ:Sport for development and Peace(以下SDPと表記)」の潮流が台頭してきた。ただ、日本での援助や国際開発の議論に目を向けると、SDPへの活動や議論への関心が世界で高まりをみせているのとは対照的に、スポーツがその領域にいかなる接点を持ちえてきたのかということが十分に議論されることは少なかった。本稿では、日本でこれまで大きく見過ごされてきたそうしたSDPの展開を焦点化し、近年のスポーツ援助をめぐる国際的な動向と課題について明らかにすることを目的とする。具体的には、スポーツを通じた社会開発の活動の変遷とスポーツ援助に関する議論の系譜を跡付けながら、開発の現場でスポーツに対する見方がいかに変化してきたのかについて検討した。スポーツ援助に対する研究者側からの問題提起を出発点としながら、貧困削減に向けたスポーツの展開をめぐり、途上国の現地側が求めるものと先進諸国側が求めるものとの差異を焦点化することで、SDPをめぐり開発を推し進める側、それを受け入れる側にはどのような問題が伏在するのかを浮き彫りにした。スポーツ援助によって活気付いたSDPの展開は、先進国の体制化したスポーツによって成し遂げられてきたが、スポーツの領域から南北問題を是正しようとするなら、そこにはスポーツが本来的に有していたコロニアリズム的要素に対する壮大な挑戦が待ち受けていることを常に視野に入れておかなければならず、その評価には、従来の定量化された指標を累積的に評価(summative evaluations)していく方法よりも、形成的な評価(formative evaluations)の方が適合的であることを指摘した。

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© 2014 日本スポーツ社会学会
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