スポーツ社会学研究
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原著論文
「研究的臨床実践」の可能性と試み
―生きていることのエスノグラフィーに向けて―
松澤 和正
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2014 年 22 巻 2 号 p. 39-52

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抄録

 エスノグラフィーは、自分の世界とは異なる世界に出かけていき、その世界や人々の生活や社会、文化などを知ろうとする方法である。ただし、そうしたあり方のなにがしかは、すでに私たちが生きているということのなかにも内在している。なぜなら、私たちが生きるということは、多かれ少なかれ、常に新たな世界や経験に出会い、それをわかろうとすることの繰り返しだからだ。従って、そのような広い意味でのエスノグラフィーを「生きていることに伴うエスノグラフィー」と呼び、他方、研究対象を限定して研究者が実施するものを「研究に伴うエスノグラフィー」と呼ぶことができる。
 「研究的臨床実践」とは、臨床の専門職などが、毎日の臨床実践に習熟しなかばパターンのように仕事をこなしている状況において、それを少しでも研究的に対象化することで、結果的により深い実践的課題にアプローチしようとするものである。これは、いかなる専門職や現場においても重要な実践的態度であり方法である。そして、この「研究的臨床実践」に必要な方法こそ、先の「生きていることに伴うエスノグラフィー」であると思われる。その場合のエスノグラフィーとは、どのような概念的且つ実践的方法論として捉えればよいかについて議論した。つまり、エスノグラフィーの質的研究方法におけるシークエンス分析の適応と、そのための記録の方法について議論し試案を提示した。

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© 2014 日本スポーツ社会学会
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