スポーツ社会学研究
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原著論文
運動生理学の研究から見えてくる身体運動システムの複雑さ
山崎 健
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2015 年 23 巻 1 号 p. 35-46

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抄録

 身体運動における骨格-筋システムの複雑さの解明には、研究の多様化と重層化とが必要である。従来は、運動司令を出す脳-神経系と指令を実行する骨格-筋系及び運動遂行時に外乱を引き起こす環境系のトップダウンシステムのみが注目されてきた。現在では、環境系から身体系と神経系へのボトムアップインフォーメーションの反復により系全体を再構築する可能性が指摘されている。
 本研究では、この問題について、三種類の筋線維と三つのエネルギー供給系が3×3のマトリクスシステムによりエネルギー系の変動に適切に対応してスキル系を変容させ適応しているとの仮説を、実際の長距離レース中の疾走動作の変容を対象として検討した。よくトレーニングされたランナーは、レースの進捗に対応してランニングスキルを変えており、これはある意味での適応制御と考えることができる。
  しかし、このような複雑なシステムの総体を、実証的に検討することは困難も多く、多くの知見を俯瞰的に統合する研究戦略と研究システムの構築が求められる。

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© 2015 日本スポーツ社会学会
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