スポーツ社会学研究
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特別寄稿
権力、政治とオリンピック
―2010年バンクーバー大会およびその他の事例から―
ドネリー・ ピーター
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2015 年 23 巻 2 号 p. 3-22

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抄録

 スポーツの当局者や政治家たちが未だに「スポーツは政治と関わりあうべきではない」と力説するのを耳にするかもしれないが、それが事実だと信じる人をみつけることは増々難しくなっている。 特にこのことは、あからさまなナショナリズムからそのイベントの経済活動まで、その全てのプロセスが非常に政治化されている国際的なスポーツイベントについてあてはまる。オリンピックのような大きなスポーツイベントの開催は、非常に多くのアクターを引き合わせる。それらは互いに異なり、時に利益を争っている。これまで大抵の研究は国際オリンピック委員会と相互に関係する「札つきたち」―様々なレベルの政府・自治体や国内/国際企業―に焦点を当ててきた。しかし、考察すべき権力軸は他にもある。本稿で私は、第1に、ヨーロッパの人間が未だに組織のほとんどの権力を保持していることを示す最近のデータを参照しながら、それに対するオリンピック・ムーブメントにおけるアジアの相対的な政治的権力について考察する。第2に、「札つきたち」が保持している高度な権力について考察する。「ソフトパワー」の手段として国際的なスポーツを利用することや、彼らによって引き起こされたオリンピック・スポーツのいくつかの問題について指摘する。第3に、学術論文ではほとんど研究されていないが、オリンピックの形態や意味に影響力をもつ、諸個人や諸集団、諸組織によって保持されている中間レベルの権力について考察する。特にここでは、どの国も大規模な国際的スポーツイベントを開催するときにはいつもサービスを提供し、時によっては雇用もされる、国際的なコンサルタントや専門家の組織に焦点を当てる。更に、間接的ではあるがしばしば予期せぬ影響力をもつ、オリンピックの批判者や抗議者たちについても考察する。

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© 2015 日本スポーツ社会学会
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