スポーツ社会学研究
Online ISSN : 2185-8691
Print ISSN : 0919-2751
ISSN-L : 0919-2751
特集
貧困削減かアカウンタビリティか?
―日本における「スポーツ×開発」の課題―
小林 勉
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 28 巻 1 号 p. 37-57

詳細
抄録

 スポーツは国際開発では新しい領域である。本稿では、21世紀に入り「スポーツ」の領域と「開発」の領域とが急速に接近した経緯を追いながら、SDGs時代にスポーツ界で何が起こっているのかについて概説する。SDGs時代のスポーツを解読していくためには、スポーツ界のみの動向を問うのではなく、まず何よりもSDGsに至る経緯を分析しなければならない。そこで本稿では、開発援助の領域において重要な枠組みになっている「国際レジーム論」の視点を援用して国際開発の枠組みの変遷を跡づける。そして、JICAにおける「スポーツと開発」事業やスポーツ庁が打ち出してきた国際戦略などを焦点化し、日本でどのような政策が立案されてきているのかについて明らかにしながら、日本の「スポーツ×開発」の本質的な問題について解題する。東京2020大会のムードを高める戦略やスポーツ庁またはJICAのアカウンタビリティの問題としてSDPを捉えるのではなく、スポーツ固有のアウトリーチ性を活かした支援によって、SDGsで掲げられた課題解決にいかに接合させられるのかが看過されている実態を浮き彫りにしながら、最終的に「スポーツ× SDGs」の時代を迎えつつある現在のスポーツの地平について批判的検討を試みる。

著者関連情報
© 2020 日本スポーツ社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top