2002 年 10 巻 p. 101-114,139
本研究は, 韓国の元トップ・アスリートにインタビュー調査を行い,「競技キャリア」や体育特待生制度によって獲得した「学歴」が競技引退後に韓国の社会でどのような受け入れられていくのかを調査した研究である。
その結果によると,
(1) 韓国の競技スポーツが世界でスポーツ強国といえるまでに著しい成果を上げた一番の要因が体育特待生制度であり, その制度は学歴志向の韓国社会の大きな動きと連動したものであった。
(2) 体育特待生制度を利用して大学まで進学し, かつ競技でよい成績をおさめた人でも, その「競技キャリア」およびそれに随伴する「学歴」がそのまま引退後の生活にうまく生かされることは少なく, 自身の「戦略」的な選択が必要とされる。また, 競技キャリアが引退後の社会活動に役立つのは, オリンピック入賞レベルの競技者が有利な状況であった。
国家やスポーツ関係者は, 個人の競技者がスポーツを通じて蓄積したキャリアをどの社会分野に活用できるかについて検討すべきであり, そういったことを可能にさせる制度的な支援対策を講じるべきである。