スポーツ社会学研究
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運動・スポーツ非実施へいたるプロセス
中年期女性を事例として
西村 久美子山口 泰雄
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2003 年 11 巻 p. 87-101,153

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抄録

本研究は、定期的に運動・スポーツを実施していない中年期女性を対象として、非実施にいたる過程を明らかにすることを目的としている。
関西在住で、(1) 定期的な運動・スポーツの非実施者、(2) 既婚女性、(3) 職業、(4) 年代、(5) 子供の有無、を基準に有意抽出をした21名を対象者して個人面接を行い、その中から15名を事例として採用した。面接では、対象者の3つのライフステージにおける運動・スポーツ実施の状況ならびにそれに影響を及ぼした様々な要因、特に (1) 時間的要因、(2) 性役割、(3) 快・不快経験ならびにそれにより形成される運動・スポーツへの態度について確認した。また非実施の理由として、運動したいと思っているが積極的な実施にはいたっていないもの (潜在群) と運動したいとは思わない、もしくは無関心なもの (拒否・無関心群) を分類し、それぞれの特徴について分析を行った。
これらの分析の結果、以下のことが明らかとなった。
まず時間的余裕は潜在群と拒否・無関心群で明らかな違いが認められた。潜在群ではほとんどの事例が非実施の理由の一つにあげていたが、拒否・無関心群では時間があってもやらないとするものもあった。
次に性役割は両群において差はなく、「女だからするな」といった直接的な規制もなかったが、妻・嫁・母となることで実際上実施が困難になっていく過程が認められた。
三番目の快・不快経験の有無とそれにより形成される運動・スポーツへの態度については潜在群と拒否・無関心群で明らかな違いが認められた。拒否・無関心群では、就学期やそれ以降の人生において十分な快経験がなく、同時に不快経験の影響が今も残り、実施に影響を及ぼしていることが認められた。

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