スポーツ社会学研究
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ソニヤ・ヘニーに見る女子選手の表象
アメリカにおける「銀盤の女王」の誕生をめぐって
中川 敏子
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2004 年 12 巻 p. 81-89,110

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抄録

これまでの日本におけるスポーツとジェンダーに関する研究の多くは、ステレオタイプに基づいた女性選手像とそれを報道するマスメディア批判に終始している。女性たちは、歴史的にスポーツの発展に貢献していることが明らかにもかかわらず、表象においては、保守的な男女の性役割に基づいた言説におしとどめられてきた。フィギュアスケートは、かつて男性のスポーツとされていたが、女子選手が進出し、今日では女性のためのスポーツとさえ言われている。こうしたなかで、女子選手がどのように表象されてきたのかを分析することは重要と思われる。
本論文では、1920年代から1930年代に活躍し「銀盤の女王」と呼ばれたソニヤ・ヘニーを取り上げる。彼女の氷上での功績および映画での役柄、実人生を見ながら、女子フィギュアスケーターがどのように表象され、どのように位置づけられてきたのかを歴史的コンテクストに着目して考察する。まず、1900年以降においては、フィギュアスケートの発展に貢献した4人の女性たちに着目し、彼女たちの功績があってヘニーの活躍が可能になったことに言及する。つぎに、1930年代にヘニーが出演した映画作品6本からヒロインの表象のされ方を明らかにする。それによって、「銀盤の女王」のステレオタイプがどのように形成されたのかを分析する。そして、どのように新しい理想の女性像が出現し、その一つであったはずの「銀盤の女王」が保守的で伝統的な男性中心の思想により歪曲されてしまったのかを論じる。

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