スポーツ社会学研究
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スポーツとメディアの融合
スポーツコンテンツの問題性
須藤 春夫
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2005 年 13 巻 p. 23-37,122

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抄録

メディアにとってスポーツの存在は、競技の事実を伝える報道対象にとどまらず、メディアの普及やメディア間の競争を有利に展開する手段として利用されている。日本では戦後、全国紙の部数競争にプロ野球が広告シンボルとして利用されたが、民放テレビの全国普及によってプロ野球は視聴率を獲得する有力な番組コンテンツとしての機能を担うようになった。1990年代以降は、国際的潮流においても人気の高いプロサッカー、オリンピックなどのスポーツ競技が、メディア (とりわけテレビメディア)の有力なコンテンツとしての地位を占めるに至り、これらのスポーツ放送権を獲得する競争が熾烈化している。メディアとスポーツの癒合は、一方でメディア技術の発展によって進行するが、他方ではメディア市場におけるスポーツの独占的な「囲い込み」の結果であり、スポーツはメディアの経営戦略に大きく影響を受けることになる。メディアにとってスポーツはコンテンツ商品であり、メディアマーケティングの対象として扱われるが、スポーツも自らの商品価値を高めるためのマーケティングによってメディア対応を図ることから、市場を媒介とする両者の融合はいっそう進展する。マルチメディア時代に入りメディアの多様化と競争の激化は、スポーツコンテンツをさらに重視するが、スポーツビジネスに成功することがスポーツの発展を意味しないのは、ヨーロッパのプロサッカーチームの消長が示している。スポーツを楽しむファンの存在を脇に置き、市場の作用力がスポーツ全体を覆い尽くす現状は、メディアで「見るスポーツ」を人間の身体性の表現行為からエンターテイメントと広告媒体のコンテンツに変容させたといえよう。

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