スポーツ社会学研究
Online ISSN : 2185-8691
Print ISSN : 0919-2751
ISSN-L : 0919-2751
スポーツ的社会化論からみたバーンアウト競技者の変容過程
吉田 毅
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 2 巻 p. 67-79

詳細
抄録

競技者におけるバーンアウトに関する研究が、1980年代後半から行われている。しかしながら、まだバーンアウトに陥った競技者のその後については明らかにされていない。そこで本研究は、5名のバーンアウト競技者の変容過程を調査し、その結果をスポーツ的社会化論の新たな視点、すなわち青年期以降のスポーツによる社会化の視点、またソーシャライジーの主体的側面を捉える視点から考察した。彼らの変容過程に関する調査には、非指示的 (自由) 面接が用いられた。
本研究で得られた主な知見は、以下の通りである。
1) バーンアウト競技者は、それぞれなりに情緒的な支えを得たことにより、積極的な主体性を発揮して問題的状況を解決し、バーンアウトを克服するに至った。彼らは、こうした過程を通して、自らの主体性ないしはアイデンティティを再形成したと言えよう。すなわち、彼らは、スポーツによる再社会化を遂げたと考えられる。
2) バーンアウトの克服ないしは予防のためには、当該競技者が情緒的な支えを得ることが重要である。しかし、それが身近で得られない場合は、自ら積極的な主体性を発揮 (形成) することが必要となる。こうした主体性を発揮するためには、内省活動を活発化し、自我の社会性を空間的・時間的により拡大することが有効な手がかりになると言えよう。
3) スポーツ的社会化論における課題は、少年期のみならず、バーンアウトを始めとして青年期以降にも色々と存在するであろう。それを解明するためには、スポーツによる社会化研究の対象を、青年期や成人期へと拡大することが不可欠である。それにより、スポーツにおける再社会化の様々な様相を分析していくことが重要と思われる。

著者関連情報
© 日本スポーツ社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top