スポーツ社会学研究
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高齢者の余暇参与傾性要因に関する研究
秋田, 山梨, 高知県老人クラブの調査から
深澤 宏
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1996 年 4 巻 p. 79-92

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抄録

1994年の厚生省の報告によれば, 日本人の平均寿命は男性, 76.25歳, 女性82.51歳と世界一となっている。しかし, このような高齢者の平均寿命の増加に伴い, 寝たきり, 痴呆症, 自殺などの増加が高齢社会に多くの社会的問題を引き起こしている。
この研究は高齢者の余暇活動参与を規定する要因を明らかにすることである。
秋田, 山梨, 高知県の60歳以上1170名に対する調査を実施し, 林の数量化II類により, 余暇活動の参与程度を従属変数とし, それに影響を与えていると考えられる11変数を独立変数として分析した。
その結果, 高齢者の余暇に影響を与えていると考えられる次の7つの要因が, 判別的中率64.9%, 相関比0.337で明らかとなった。
(1) 生活満足度 (カテゴリ・スコアー・レンジ=0.64)
(2) 学歴 (レンジ=0.42)
(3) 性別 (レンジ=0.24)
(4) 体力 (レンジ=0.22)
(5) スポーツ実施 (レンジ=0.22)
(6) 余暇是認尺度 (レンジ=0.21)
(7) 健康状態 (レンジ=0.21)
従来言われていた,「金」「暇」は, 高齢者の余暇参与には若い人達ほど強い要因にはなっていないことが明らかとなった。今後, 高齢者の余暇活動を豊かにするためには, 余暇を行うのに十分な生活全般の内面的な満足や体力, 健康度や余暇に対する是認的態度, 幼少期からの多様な余暇活動が必要であることを示唆している。

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