スポーツ社会学研究
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スポーツ番組の制作現場からみた「テレビ・スポーツ」に関する研究
擬似的なせめぎ合いとしてのテレビ・スポーツ
橋本 政晴
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1997 年 5 巻 p. 71-84

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抄録

本稿は, スポーツ番組の制作現場のメカニズムや, そこに生きる制作者たちの姿を描き出すことを通して, テレビ・スポーツを捉え直そうとする試みである。
先行するテレビ・スポーツに関する研究蓄積では, 社会におけるその効果や機能, 文化的・社会的な意味解釈に視角が向けられ, 制作者たちからの一方的な視聴者たちへの伝達としてテレビ・スポーツが位置づけられていた。そこで, スポーツの中継番組とニュース番組を事例として, テレビ・スポーツを相互的な関係, ここでは擬似的なせめぎ合いのもとに位置づけるための糸口を求めた。
その結果として次の3点を指摘した。第一に, 映像の選択に関する暗黙の技法マニュアルや取材技法の存在が確認され, メディア・テクノロジーによる強い支配のもとにテレビ・スポーツは作り出されていた。第二に, スポーツのさまざまな場面に対応した制作の手法やニュース・ネットワーク, 記者配置の空間的な組織化が第一点目と相まって, 番組に共通した特定のパターンを生み出していた。第三に, こうした制作現場に潜むメカニズムは, 制作者たちが直接は対面できない視聴者たちの「ウケ」をイメージしていることから生成されたものであった。
以上のことから, 制作者たちと視聴者たちの擬似的なせめぎ合いの関係のもとに, テレビ・スポーツを位置づけ, 捉え直しの方向性を提示した。

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