スポーツ社会学研究
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ある身体障害者のスポーツへの社会化に関する研究
車いすバスケットボールプレーヤーの個人史より
藤田 紀昭
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1997 年 6 巻 p. 70-83,128

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抄録

スポーツへの社会化過程に影響を及ぼす, マクロレベルの要因に注目した研究や, 社会化の要素の一つである, 社会化される者の個人的属性について深く掘り下げた研究は数少ない。本研究ではこの点に注目し, 身体に障害のあるスポーツ選手の個人史を使い, スポーツへの社会化過程, すなわち, 社会化される主体的個人と社会化のエージェントとの相互作用の過程を, コンテクスト, 制度, 文化といった枠組みの中で明らかにする。
そのために, 車いすバスケットボール選手 (若田瞳さん, 仮名) からの聞き取り調査, 個人史の確認を目的とした, 関係者への聞き取り調査および, 関係文書・文献調査を行った。
その結果, 次のようなことが示唆された。
1. 重要な社会化のエージェントは時間経過とともに変化していること, また, 複数のエージェントが同じ時期に, 重層的に影響を及ぼしていた。
2. 若田さんは社会化される個人であると同時に, 自らをスポーツへと社会化していく主体的個人でもある。
3. 二分脊椎という先天的障害のあった若田さんにとって, 低年齢時のリハビリテーションは, その後のスポーツ活動に重大な影響を及ぼしていた。
4. 統合された, 遊び, 運動, 教育 (体育) の場での相互作用過程は若田さんのスポーツ的社会化 (スポーツへの社会化および,スポーツを通しての社会化) に大きな影響を与えていた。
5. スポーツへの社会化過程は文化, 制度, コンテクスト, エージェントと関連しあっていた。

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© 日本スポーツ社会学会
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