1999 年 7 巻 p. 44-54,79
冷戦の終結が, 新たなパラダイムとして民族主義の台頭を生み出した。従前, 無意識下にあったこの民族の顕在化はスポーツの世界でも例外ではない。国家や民族という社会的な境界を越える「越境選手」をより強く意識せざるを得なくなっている。一見同じ環境下にあるように見える彼らからは, 異なるあるいは共通するメッセージが発信されている。本研究では, 海外への移籍と帰化動機に基づき「越境選手」を分類した上, 彼らの発信する「シークレット・メッセージ」を分析することを目的とした。彼らが帰化する背景には, それぞれ商業至上主義, グローバリーゼーション, 同化主義といった世界や日本の社会的事象との連関がある。