スポーツ社会学研究
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格闘する身体の文化社会学序説
キックボクシングのフィールドワークから
山本 敦久
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2001 年 9 巻 p. 119-128,139

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抄録

本稿は、キックボクサーたちの試合に備えた禁欲的な生活や厳しいトレーニングによる身体の磨き上げのプロセスに注目し、なぜ彼らが身体的危険や苦痛が伴うにもかかわらず「闘い続ける」のかを、フィールドワークをもとにしながら分析した。
第1に、試合前2週間の減量や欲望の抑制に注目し、ジムの選手たちの相互監視によって、身体が自己規律化されるプロセスに注目した。
第2に、キックボクサーの禁欲的な生活実践と、彼らが生きている社会的コンテクストとの結びつきを分析した。
第3に、それらをふまえた上で、なぜ彼らは「格闘し続けるのか」を分析した。その結果、彼らが生きてきた (生きている) 社会的な条件のもとで繰り返される欠如 (「ハングリーの場所」) の体験を刻み込んだ身体図式が、試合に備えて減量や欲望の抑制によって欠乏感を駆り立てる身体図式のパターンときわめて一致することが明らかとなった。そして、試合前の減量の体験や欲望の抑制による禁欲的な生活実践を繰り返していくうちに、そこから生みだされる欠乏感を格闘に向けていくことなしには、自分のアイデンティティを保てないほど、彼らは格闘を欲していくことになるのである。

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