日本血栓止血学会誌
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特集:「血栓止血の臨床─研修医のためにVI」
3.産科領域における抗血栓療法の特殊性(産婦人科の立場より)
杉村 基
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2008 年 19 巻 6 号 p. 745-749

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抄録

Point
(1)妊娠中の抗凝固療法は胎盤通過性のないヘパリン(もしくは類似物質)のみである.
(2)ヘパリン誘発性血小板減少(HIT)発症時は代替薬剤としてのヒルジンアナログ(アルガトロバン)は胎盤通過性のため使用できない.
(3)低用量アスピリンは動静脈血栓症を起こしうる抗リン脂質抗体症候群(APS)のみならず,胎盤内凝固の抑制を目的として妊娠中使用することがある.
(4)胎盤内ならびに産褥子宮内での凝固線溶現象の結果,FDP-DD値は妊娠産褥期,DVTの診断の参考にならない.
(5)妊婦では生理的に遊離型プロテインS活性低下がおこり,妊娠産褥期は活性化プロテインC(APC)に対する感受性が低下する.
(6)妊娠中は凝固因子の増加により過凝固状態となる.

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© 2008 日本血栓止血学会
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