日本血栓止血学会誌
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特集 生体の“形”と血小板/凝固線溶システム
鼻副鼻腔組織リモデリングにおける凝固線溶系因子の関わり
清水 猛史清水 志乃
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2017 年 28 巻 5 号 p. 603-611

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抄録

要約:鼻副鼻腔炎症では血管透過性の亢進やTF(組織因子)発現などを介して,凝固系が活性化される.一方,凝固線溶系因子には多彩な生理作用があり,炎症病態に直接関わっている.好酸球性鼻副鼻腔炎は,多発性の鼻茸形成と著しい好酸球浸潤,粘稠なニカワ様鼻汁を特徴とする難治性疾患である.私たちは,①鼻副鼻腔炎,とくに好酸球性鼻副鼻腔炎において凝固系が局所で活性化されていること,②トロンビンなどの凝固因子が鼻粘膜上皮細胞や線維芽細胞のプロテアーゼ受容体を介して,組織リモデリングや炎症細胞浸潤に関わるサイトカイン,気道粘液,細胞外基質の産生を促進すること,③抗凝固薬である活性化プロテインC やヘパリンには多彩な抗炎症作用があり,局所点鼻投与により上気道炎症が抑制できる可能性を明らかにした.こうした検討が,ステロイド以外に有効な薬物療法がない好酸球性鼻副鼻腔炎に対する新たな治療手段につながることを期待する.

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© 2017 日本血栓止血学会
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