2017 年 28 巻 6 号 p. 702-707
要約: 2016 年4 月に起きた熊本地震により,熊本県では多くの人が被災した.今回,地震直後より医師・看護師・薬剤師で話し合い,災害対応について検討し,被災した血友病患者(以下,患者)の対応を行った.本震から3 日後,看護師が当院通院患者18 名に電話連絡し,患者の身体的・精神的状況,服薬状況,血液凝固因子製剤を含む残薬の確認,居住・通院時の移動手段の確認を行った.患者は周囲に病名を告知していない場合もあり,震災により避難所などのプライバシーの確保が難しい場所やライフラインが整っていない場所,血液凝固因子製剤の自己静脈注射をする上で不衛生な環境で生活を送っていた.また,病気・治療に対しての不安を相談する機会がない状況であった.しかし,病院からの連絡により不安を緩和することができたとのことであった.災害時の対応について,日頃より検討しておくことの必要性が実感された.また,震災直後の患者連絡は患者の抱える問題への早期対応につながるとともに,医療者の声を聞くことで患者の不安が軽減する可能性があると考えられた.