2018 年 29 巻 5 号 p. 473-486
要約:現在,抗悪性腫瘍剤として臨床応用されているチロシンキナーゼ阻害薬(TKI) の多くは,阻害すべき標的分子に加えて,種々のoff-target 分子を阻害することが知られている.慢性骨髄性白血病(CML) に対するTKI 治療では,標的であるBCR-ABL 以外に血管新生等に関与する血管内皮細胞,血小板,マクロファージ,肥満細胞等に発現しているoff-target が阻害されることにより,様々な心血管イベント(CVE)としての血栓塞栓症が発症する.その劇的かつ持続的な臨床的有用性のため,CML に対するTKI 投与は,長期間となり,治療継続に問題となるCVE 等に関する知見も蓄積されている.CML の治療では,TKI 投与開始前に,十分な糖尿病,高血圧等の心血管系のリスク評価を行い,投与開始後は心電図,心エコーなどの適切なモニタリングを継続的に実施する必要がある.