2021 年 32 巻 3 号 p. 296-302
脳梗塞とは,脳を栄養する血管が閉塞もしくは狭窄することにより,その灌流領域に血流不全が生じ十分な酸素や栄養が供給されなくなり,結果として脳神経細胞が傷害されてしまう疾患である.近年の血栓溶解薬やカテーテル治療の進歩により脳梗塞の転帰は改善してきているものの,未だそれらの再開通療法の適応となる患者は10%未満であり,大半の患者には脳梗塞が完成することになる.脳は脆弱な組織であり,かつ再生能力が限定的であることから,完成した脳梗塞に対する根本的な治療は存在しなかったが,近年では幹細胞治療により脳を再生させられる可能性が見いだされ期待が集まっている.本稿では脳梗塞に対する幹細胞治療の現状を概説後,Muse細胞を用いた新規治療開発につき述べる.