日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
Print ISSN : 1881-3011
ISSN-L : 1881-3011
原著
成人臍帯血ミニ移植におけるタクロリムスの安全性と有効性の血中濃度に基づいた検討:単一施設における39例の後方視的検討
伊藤 忠明伊能 佳奈子那須 いずみ箕曲 真由美古澤 正子奥野 友理内田 ゆみ子田村 宏美長谷部 忍辻 正徳高木 伸介山本 久史森 有紀松野 直史内田 直之増岡 和宏和氣 敦牧野 茂義宮腰 重三郎谷口 修一林 昌洋
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2010 年 56 巻 3 号 p. 359-364

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抄録
臍帯血ミニ移植施行後,FK506単剤(10から20ng/ml)による急性GVHD予防を行った39症例を対象にFK506の安全性と有効性を血中濃度に基づき後方視的に検討した.FK506の副作用は,腎障害8例(20.5%),中枢神経障害4例(10.3%),消化管障害2例(5.1%),肝障害2例(5.1%)であった.FK506の血中濃度を合併症発現前10日間の平均血中濃度で解析した結果,腎障害重篤群20.4ng/ml,非発現・軽症群14.8ng/mlと両群に有意差を認めた.FK506の血中濃度が17ng/ml未満の腎障害発現率は6.9%,17ng/ml以上の腎障害発現率は60.0%とFK506血中濃度が17ng/ml以上で有意に腎障害の発現率が上昇すると考えられた.
移植後60日以内の急性GVHDの発症率はGradeII~IVで27.7%であり成人臍帯血ミニ移植に対するFK506単剤使用の有効性が示唆された.FK506有効域の下限を示すことは出来なかったが,FK506の血中濃度が17ng/ml以上の症例では急性GVHDは発症していないことから,FK506の血中濃度と急性GVHD抑制との相関の可能性が示唆された.
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© 2010 日本輸血・細胞治療学会
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