抄録
臍帯血ミニ移植施行後,FK506単剤(10から20ng/ml)による急性GVHD予防を行った39症例を対象にFK506の安全性と有効性を血中濃度に基づき後方視的に検討した.FK506の副作用は,腎障害8例(20.5%),中枢神経障害4例(10.3%),消化管障害2例(5.1%),肝障害2例(5.1%)であった.FK506の血中濃度を合併症発現前10日間の平均血中濃度で解析した結果,腎障害重篤群20.4ng/ml,非発現・軽症群14.8ng/mlと両群に有意差を認めた.FK506の血中濃度が17ng/ml未満の腎障害発現率は6.9%,17ng/ml以上の腎障害発現率は60.0%とFK506血中濃度が17ng/ml以上で有意に腎障害の発現率が上昇すると考えられた.
移植後60日以内の急性GVHDの発症率はGradeII~IVで27.7%であり成人臍帯血ミニ移植に対するFK506単剤使用の有効性が示唆された.FK506有効域の下限を示すことは出来なかったが,FK506の血中濃度が17ng/ml以上の症例では急性GVHDは発症していないことから,FK506の血中濃度と急性GVHD抑制との相関の可能性が示唆された.