抄録
抗KANNOは1991年に福島医大病院で遭遇した高頻度抗原に対する抗体で,既知の抗体にはその反応性が一致するものが無かった.発端者に因み,この抗体を抗KANNO,対応抗原をKANNO抗原と名付けた.KANNO抗原発見に関わった福島医大病院2症例と山形県および宮城県赤十字血液センターで同定した抗KANNO 12例,計14例について反応性,臨床的意義を検討した.
抗KANNOを保有する14例のうち13例が妊娠歴のある女性であり,輸血よりも妊娠によって産生されやすい抗体であると考えられる.抗KANNOは高力価低親和性(HTLA)抗体の特徴を示し,類似した反応性を持つ抗JMHとは,AET処理赤血球と反応する点で鑑別できる.現在まで,抗KANNOによる溶血性輸血副作用(HTR)や胎児・新生児溶血性疾患(HDFN)の報告はなく臨床的意義は低いと考えられるが,さらに症例を蓄積する必要がある.