日本輸血細胞治療学会誌
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総説
自己抗体と高頻度抗原に対する抗体
堀 勇二
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2016 年 62 巻 6 号 p. 623-629

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抄録

輸血検査において直接抗グロブリン試験陽性は,しばしば遭遇するやっかいな問題である.陽性の原因には自己免疫性疾患,新生児溶血性疾患,血液型不適合輸血,薬剤の影響によるものなどが考えられる.

直接抗グロブリン試験陽性者に認められる自己抗体は,特定の血液型抗原に特異性を示すものは少なく,約半数がRh血液型の高頻度抗原に特異性を示し,残りの半数は赤血球膜上のband3に対する抗体と報告されている.また,band3に対する抗体の約半数は抗Wrbの特異性である.特定の血液型抗原に特異性を示す抗体には,真の抗原と反応する抗体と,別の抗原と反応しているが真の抗原と反応する抗体と同様の特異性を示すmimicking抗体がある.Mimicking抗体にはRh血液型に特異性を示すものが多い.

自己抗体を保有する患者への輸血は,日本輸血・細胞治療学会からガイドラインが示され,自己抗体が特定の抗原に特異性を示さない場合や自己抗体以外に同種抗体を保有する場合に分けて推奨する輸血血液が示されている.自己抗体によりクロスマッチ陽性となる血液の輸血の安全性については,適切な血液を選択することにより,輸血効果があり溶血のリスクのないことが文献で示されている.

一方,病的な原因ではなく,生理的に赤血球に対する自己抗体が準備され,赤血球寿命に関連していることが報告されている.

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© 2016 日本輸血・細胞治療学会
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