日本輸血細胞治療学会誌
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原著
複数回洗浄した洗浄赤血球製剤の品質
金子 祐次平山 順一小野寺 秀一小池 敏靖岩間 輝茶谷 真柴 雅之永井 正佐竹 正博田所 憲治
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2017 年 63 巻 6 号 p. 757-762

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抄録

洗浄赤血球製剤(WRC)は非溶血性輸血副作用防止に有効である.しかし,複数回洗浄したWRCについてはその品質や残存血漿タンパク量などを検討した報告はない.本研究では,1回,2回及び3回洗浄したWRCを洗浄後72時間まで保存し,製剤の質的検討を行った.WRCは,赤血球製剤の遠心上清を除去し,生理食塩液を添加し調製した.2回または3回洗浄は洗浄工程を繰り返し行い調製した.WRCの赤血球回収率は3回洗浄群でも98 %以上であった.残存血漿タンパク量,IgA量,ハプトグロビン(Hp)量は洗浄回数が増えるにつれ低減した.pHは保存期間中6.8以上を維持し,MCV,2.3-DPG,赤血球浸透圧抵抗性は1回,2回,3回洗浄群間で有意差がなかった.ATPは洗浄後72時間で3回洗浄群のみ有意に低下した.上清Hb濃度及び溶血率は保存期間中1回洗浄群よりも複数回洗浄群の方が高値を示したが,溶血率が0.3%を超えることはなかった.上清K濃度は洗浄直後から経時的に上昇したが3群間で差はなかった.複数回洗浄したWRCの残存血漿タンパク量,IgA量,Hp量は著しく低減した.複数回洗浄したWRCの品質は有効期間まで良好に維持されていると考える.

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© 2017 日本輸血・細胞治療学会
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