日本輸血細胞治療学会誌
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総説
新生児におけるCMV感染経路
永井 正
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2018 年 64 巻 3 号 p. 479-483

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抄録

サイトメガロウイルス(CMV)は,新生児期を含む乳児期あるいは幼小児期に感染することが多いが,無症状あるいは軽度の症状で終息することが多い.しかしながら,超低出生体重児が新生児期に感染すると,重篤な臨床所見を認める場合が珍しくなく,致死的な転帰をたどることもある.超低出生体重児におけるCMVの感染経路は,既感染の母親からの母乳感染,輸血感染さらに水平感染が想定されているが,輸血を受けるケースが多いため実臨床ではしばしば輸血感染が疑われる.しかしながら,CMV-DNA陽性献血ドナーからの血液製剤が一定の確率で存在しているにも関わらず,現時点では輸血感染と確定された国内症例はない.国内では白血球除去が全面導入されている点からも,輸血感染のリスクは極めて低いと思われるが,さらにCMV抗体陰性血の使用が超低出生体重児に対して勧奨されている.一方,日赤では国内のCMV輸血感染症疑い症例について感染経路の検討を進めており,現時点では,ほとんどが母乳感染と結論づけられている.海外からも母乳が主たる感染経路であるとする報告が相次いでおり,今後は母乳感染の防止対策の確立も重要な課題となる.

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© 2018 日本輸血・細胞治療学会
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