日本輸血細胞治療学会誌
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症例報告
腎生検後に巨大血腫を合併したIgA腎症合併成人血友病A
島田 恒幸山本 晃士
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2018 年 64 巻 6 号 p. 766-772

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抄録

凝固因子製剤の在宅自己注射療法の普及により,成人血友病患者は健常男性とほぼ同様の平均寿命となってきた.それにともない,慢性腎臓病などの腎疾患を含む生活習慣病を指摘される血友病患者も増えつつある.今回タンパク尿を有する中等症成人血友病A患者に対して腎生検を行い,その後腎周囲に血腫を併発した症例を経験した.症例は27歳男性で,1歳時に中等症血友病Aと診断されている.数年前より蛋白尿を指摘されていた.左腎臓に対する生検前に,FVIII:Cピーク値を60~70目標としてルリトコグアルファ2,000IUを投与した.生検1時間後にも同製剤2,000IUの追加補充を行った.十分量の遺伝子組み換え型標準第VIII因子製剤による補充療法を行って腎生検を施行したが,生検1日目に腎周囲に巨大血腫を併発した.生検1日目から44日目までオクトコグアルファ2,000IUの投与を行い,血腫は縮小した.その後,ルリオクトコグアルファのpopulation PK(my PK-FIT)を行い,同製剤の投与量を1,500IU/回,週3回で出血予防目的に定期補充療法を開始した.補充療法を開始後2年間で出血症状は認めなかった.出血の十分なコントロールのためには症例毎にPKなどを行う必要があると考えられた.

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© 2018 日本輸血・細胞治療学会
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