日本輸血細胞治療学会誌
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症例報告
新生児におけるcisAB型の血液型検査反応性と発育に伴う抗原量の変化に関する検討
櫻澤 貴代高橋 秀一郎渡邊 千秋伊藤 誠魚住 諒増田 裕弥早坂 光司西田 睦杉田 純一豊嶋 崇徳
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2020 年 66 巻 1 号 p. 31-35

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抄録

cisA2B3型はオモテ検査での抗A,抗Bの反応が弱く,血漿中に抗Bが認められる反応態度であるが1),新生児におけるcisA2B3型の反応態度に関する報告は少ない.今回,cisA2B3型が疑われる新生児の血液型反応態度と成長に伴う血液型抗原量の変化について検討した.

症例は日齢0日の新生児.ABO血液型検査はカラム凝集法にてオモテ検査のみ施行し,抗A:2+,抗B:0となった.母親が血清学的検査でcisA2B3型と疑われていたことから,児の血液型精査,母児のABO遺伝子タイピング,血液型抗原量を測定した.児の赤血球の抗B吸着解離試験よりB抗原が検出され,ABO遺伝子タイピングでは母児共にcisAB01/O01と判定された.血液型抗原量は母親と比較して児のA,B抗原量は低く,特にB抗原量が著しく低かった.1歳11カ月時に再検査したところ,児のB抗原量は出生時よりも増加し,血漿中から抗Bが検出された.

新生児のcisAB型では通常の血液型検査では検出できないB抗原量であるため,血液型判定に際しcisAB型を疑う場合はABO遺伝子タイピングや血液型抗原量の測定が有用であることが示唆された.

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© 2020 日本輸血・細胞治療学会
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