日本輸血細胞治療学会誌
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症例報告
自己のI抗原が一過性に検出されず診断に苦慮した自己抗I陽性の寒冷凝集素症
石山 和樹中山 享之丹羽 玲子小園 愛弓藤田 江美松尾 友仁安藤 髙宣高 四強林 恵美片井 明子加藤 静帆田中 光信髙橋 順子加藤 栄史
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2021 年 67 巻 4 号 p. 516-521

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抄録

患者は70歳代の男性,O型RhD陽性,輸血歴は無し.術前検査にて溶血性貧血を指摘された(2014年).直接抗グロブリン試験は抗IgG及び抗補体ともに陽性.不規則抗体スクリーニングは自己対照及びスクリーニング用赤血球試薬の全てが陽性であった.O型新生児赤血球とは反応せず自己抗Iと同定した.4℃での寒冷凝集素価は1:16,384以上,反応温度域は4℃~30℃であった.赤血球製剤の輸血が必要になり,交差適合試験は間接抗グロブリン試験で完全溶血を認めた.Ii抗原検査では患者赤血球は抗Iモノクローナル抗体と反応せず,I抗原が検出されなかった.I抗原を決定するGCNT2の遺伝子解析を2016年に実施し,変異のないGCNT2*01型であった.2017年にIi抗原検査を再度試みたところI抗原およびi抗原が検出された.寒冷凝集素価は1:1,024に低下していた.I血液型特異性を示す寒冷凝集素を検出したが,I抗原が検出されず,慎重な検査結果の判断が必要となったが,I抗原およびi抗原と貧血を経過観察することが有効と考えられた.

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© 2021 日本輸血・細胞治療学会
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