日本輸血細胞治療学会誌
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Print ISSN : 1881-3011
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原著
自己血貯血後の遅発性有害症状予測のための非侵襲的心拍出量モニタリングの有用性
寺田 類池田 敏之山崎 翔石井 一彦佐藤 智彦岡崎 仁
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2022 年 68 巻 5 号 p. 515-526

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抄録

献血や自己血貯血後に遅発性に生じる有害な身体症状は病態生理がよくわかっておらず, かつ有効な予防策もないため, 献血者/自己血貯血患者の安全を担保する上での残された課題となっている. 今回, 72人の自己血貯血患者を対象に, 非侵襲的に心拍出量 (CO) と1回拍出量 (SV) をリアルタイムで測定できるエスクロンミニを用いて貯血中の変化を測定した. アンケート紙法を用いて, 独自に開発したpreoperative autologous blood donation adverse reaction scale (PADARS) を使用し, 貯血後の遅発性身体症状の重症度を推定した. 合計PADARSスコアとエスクロンミニの測定値, および貯血患者の臨床的背景との関係を, 多変量線形回帰モデルを使用して評価した. 結果として, 貯血後, COとSVはそれぞれ0.79±0.43l/分, 9.4±6.7mlと減少しており, アンケートに回答した30人の貯血患者のうち, 14人 (47%) が何らかの遅発性身体症状を自覚し, 2人 (7%) は比較的重度の身体症状 (スコア≥5) を認めた. 解析の結果, 年齢と貯血終了時のSV値が, 合計PADARSスコアと逆相関していることが明らかになった (p<0.05). 若年齢に加えて, エスクロンミニによって測定された貯血後のSV値の低値は, 遅発性有害症状の危険因子となる可能性があることが示された.

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© 2022 日本輸血・細胞治療学会
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