2023 年 69 巻 1 号 p. 1-7
背景:大量出血時に伴う希釈・消費性凝固障害に対するクリオプレシピテート(クリオ)の使用が近年広がっている.クリオはフィブリノゲン補充効率が高く止血効果に優れるが,作製時に生じるクリオ上清血漿(乏クリオ)は推奨・提言がない.そこで,当院における乏クリオの使用状況を調査し検討を行った.
方法:2015年1月~2018年1月にクリオが供給された症例を対象に後ろ向きで調査を行い,1)クリオおよび同一症例に共に供給される乏クリオの使用状況,2)乏クリオの併用に影響する因子について解析し検討を行った.
結果:161例に対し,FFP480から作製した676袋のクリオが供給され,620袋が使用された.疾患別の乏クリオ併用/クリオ使用はCPB使用手術237/524袋,CPB非使用手術18/80袋,手術以外1/16袋であった.AB型の異型適合血(AB型クリオ)は多変量解析により乏クリオ併用率を減少させる有意な関連因子であった(OR:0.45,95%CI:0.22~0.90,p<0.02).
考察:AB型クリオの使用が乏クリオ併用を控える要因だが,異型のAB型クリオを使用した症例に輸血関連合併症は認めなかった.今後乏クリオの使用方法や有効性の検討が必要である.