日本輸血細胞治療学会誌
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症例報告
リツキシマブ投与下の生体腎移植後にPassenger Lymphocyte Syndromeを発症した1例
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2023 年 69 巻 1 号 p. 15-19

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抄録

Passenger lymphocyte syndrome(PLS)は造血幹細胞移植や臓器移植のあとに溶血性貧血の症状を呈する状態のことである.その発症機序は,移植によってドナー由来抗体産生細胞が移入され,増殖し抗体を産生することで溶血が起こる.

レシピエントは60代女性でA型RhD陽性,ドナーは夫で60代男性,B型RhD陽性であった.血液型不適合腎移植となるため,移植前にリツキシマブ投与を含む脱感作療法を実施した.移植4日後に溶血性貧血の所見を認めたため赤血球液を輸血した.一時的に輸血効果を認めたが徐々に貧血が進行し,移植16日後に再度赤血球液の投与を計画したところ交差適合試験で不適合となった.精査の結果,ドナー由来と考えられる抗Aが検出されたためPLSによる溶血性貧血が考えられO型洗浄赤血球を輸血した.一過性に輸血効果を得たが,貧血の進行と輸血を繰り返した.

移植後の溶血性貧血の原因としてPLSを考慮することが必要であり,レシピエントの血液型ウラ検査を間接抗グロブリン試験で実施することや,直接抗グロブリン試験,抗体解離試験でドナー由来血液型抗体を証明することが重要である.

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© 2023 日本輸血・細胞治療学会
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