2025 年 71 巻 1 号 p. 1-8
鹿児島県離島の中核病院である鹿児島県立大島病院(大島病院)において,悪天候で日本赤十字社輸血用血液製剤(日赤血)の入手困難が予測される場合や,脳死下臓器提供時など一時的に在庫血を増やす必要がある場合を想定し,臨時の血液の返品再出庫(BR;Blood Rotation)を施行した.鹿児島県赤十字血液センター(血液センター)から血液搬送装置(ATR;Active Transport Refrigerator)を用い,O型あるいはA型赤血球製剤を搬送し,未使用製剤を鹿児島県本土の複数医療機関で使用する臨時BRを行い,その有効性と課題を抽出した.
悪天候時の臨時BRは費用対効果に優れるも,定期的BRよりも必要時に血液がそこにあるという安心感は低下した.一方,脳死下臓器提供時BRは安心・安全な血液を有効に使用するうえで有用であった.臨時BR時における血液センターの人的負担,調整の在り方についての課題が明らかになった.