日本輸血学会雑誌
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妊娠による血小板反応性抗体 (HLA抗体と human platelet antigens 抗体) の産生: 妊娠回数及び週齢と抗体陽性率の解析
榎本 隆行丸岡 尚子花垣 澄雄森田 庄治島村 益広半戸 啓一石島 あや子吉川 昭湯浅 晋治高橋 孝喜大戸 斉
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2000 年 46 巻 5 号 p. 467-473

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抄録

妊娠や輸血により作られるHLA抗体は, 新生児血小板減少症や血小板輸血不応答の原因となる. 輸血の際に白血球除去フィルターを使用する事でHLA抗原感作は減少している. しかしながら, 妊娠による抗原感作を予防する有効な手段がない. また, 妊娠歴のある女性は, 輸血時に白血球除去フィルターを使用してもHLA抗体を産生する率が高い.
そこで, 我々は, 輸血歴のない妊婦4,069例の抗体スクリーニングを行い, 妊娠回数及びその週齢と抗体陽性率の関係について検討した.
その結果, 初回妊娠の初期であってもHLA抗体や human platelet antigens (HPA) 抗体が検出され, 妊婦のHLA抗体陽性率は, 初回妊娠で3.5%であったが, 妊娠回数が増すごとに約5%程度上昇し, 全体では, 9.4%であった. 妊婦のHLA抗体陽性率 (9.4%) は, 白血球除去フィルターを用いた輸血患者 (11.2%) とほぼ同程度であり, 出産経験のある献血者 (2.6%) に比べると約4倍であった. 妊婦のHPA抗体陽性率は0.6%であり, 初回妊娠では0.2%であるが, 妊娠回数とともに陽性率が増加し, この陽性率は, 出産経験のある献血者 (0.6%) とほぼ同程度で, 白血球除去フィルターを用いた輸血患者 (1.0%) の約半分であった. HPA抗体の特異性はHPA-5bに対するものが多く, ついでHPA-4bに対する抗体であった.

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© 日本輸血・細胞治療学会
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