本報では高温高圧状態の水素の粘性係数を簡便かつ正確に求めるための実用的な推算式を提案した.従来,低密度気体に適用できるChapman-Enskog理論をベースにした式に,高密度補正を加える方法が提案されているが,本推算式は,低密度領域でChapman-Enskog式における分子間力定数を,高密度領域でDillerの密度補正式の定数を最適化することにより得られている.既存の実測値と比較した結果,本推算式は高温・高圧力下の水素の粘性係数を偏差2~4%以内で予測出来ることが確かめられた.本推算式の適用範囲は,圧力0.1MPaで温度範囲40~2130K,および0.1~220MPaで,100~990Kである.