2018 年 32 巻 3 号 p. 104-111
長期の低温環境を経験する探査機では,断熱材の有効熱伝導率が探査機内部の温度を決定する重要なパラメータとなる.本研究の目的は,小さいサイズの次世代宇宙機用断熱材の有効熱伝導率測定を行うことを目的としている.断熱材の有効熱伝導率測定は,保護熱板法によって行われるのが一般的である.しかしながら,宇宙用断熱材の有効熱伝導率は10-3~10-4 (W/(m・K))オーダーであるため,熱損失の影響が相対的に大きくなり,測定値の信頼性が低い.そこで,熱損失源となる箇所に温度制御を施した小サイズ(130×130mm)の保護熱板法装置を試作し,正確な有効熱伝導率測定を試みた.また,試験体温度差を変更した測定を繰り返し行うことで,実際に生じている熱損失量を推算する方法を考案し,測定精度の向上および装置の健全性の確認を行った.