東北家畜臨床研究会誌
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牛ハイエナ病の病因に関する研究
高木 久
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1996 年 19 巻 2 号 p. 74-86

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抄録

本研究は、牛ハイエナ病の病因としてその関与が示唆されたビタミンAD3E(V-AD3E)剤と発症との関連を明らかにすることを目的として行った。(1)野外発症例の調査においては、牛ハイエナ病と臨床診断された12~17ヵ月齢の11頭を用い、V-AD3E剤の投与の有無および量を調査した。その結果、全頭に共通して1ヵ月齢以内に大量のV-AD3E剤が連日経口投与されていた。骨形態計測を行った2頭では、骨代謝の低回転による骨形成の低下が認められた。(2)野外発症例の検索に基づき、子牛へV-AD3E剤、ビタミンA(V-A)またはビタミンD3(V-D3)を大量投与して牛ハイエナ病の発症試験を行った。各ビタミン剤を子牛に7日齢から10日間大量経口投与したところ、V-AD3E剤(日量V-A300万I.U.、V-D3 30万IU.、V-E 1,200 I.U.)を投与した2頭中2頭、その半量を投与した2頭中1頭および日量V-A 300万I.U.を投与した2頭中1頭の計4頭にハイエナ病の発症が認められたが、日量V-D3 30万I. U.を投与した2頭ではハイエナ病は観察されなかった。すべての発症牛においてV-Aの過剰を示すレチニルパルミテートが1ヵ月齢まで血中に検出された。骨形態計測の結果では、対照牛に比較して発症牛の骨代謝は50日齢で低回転を示し、骨量は12ヵ月齢で低値を示した。骨端軟骨板の観察では、発症牛の予備軟骨帯および増殖帯の軟骨細胞は扁平化し、数は少なく、柱状配列の構造は不整を示した。(3)結論として、牛ハイエナ病の病因は子牛へのV-Aの大量投与であることを本研究は明らかにした。

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