2013 年 19 巻 3 号 p. 135-147
過去15年の間に皮膚疾患を主訴として受診した猫の13.8%,ならびに全症例の0.9%がアトピー性皮膚炎と診断された。本症に特有の好発年齢や性差は認められなかったが,アビシニアン,ヒマラヤンまたはペルシャに好発する傾向があった。季節性を伴わない臨床症状が症例の62.4%で認められた。皮膚の反応パターンを頻度の高いものから順に挙げると,皮疹を伴わない左右対称性の?痒(特に顔面,耳介および頸部),外傷性脱毛(特に腹部,背部および四肢),粟粒性皮膚炎(特に背部および頸部)ならびに好酸球性肉芽腫群(特に亢進,腹部および大腿内側)の順であった。症例の36.2%では異なる反応パターンが同時に認められた。症例の18.6%では二次的な細菌感染が,また症例の6.6%では酵母による感染症が認められた。食物アレルギーとの合併を認めた症例の頻度はわずか4.5%で,ノミアレルギーとの合併例は認められなかった。多くの症例では,グルココルチコイド製剤や抗ヒスタミン薬,オメガ-6/オメガ-3脂肪酸,アレルゲン特異的減感作療法,ならびにこれらの併用療法により,臨床症状を良好に管理することができた。