2005 年 10 巻 1 号 p. 39-41
食虫目から地上性種としてジャコウネズミを, 半地上半地下性種としてモグラジネズミを, 完全地下性種としてアズマモグラを選び, 前肢の4つの筋肉(棘上筋, 棘下筋, 大円筋, 肩甲下筋)の体重に対する重量比率を比較, 肩領域の適応的変化を定量的に明らかにすることを試みた。筋重量の定量的比較から, アズマモグラで大円筋が有意に大きく, 同筋が掘削行動における上腕の内転に適応していることが示された。逆に, 棘上筋はジャコウネズミとモグラジネズミで発達し, 地上性ロコモーションにおいて肩関節の伸展に重要な役割を担っていることが示唆された。また, アズマモグラのような完全地下性の種が大きな棘下筋と肩甲下筋を備えていることが明らかとなり, 棘下筋が掘削運動に必要な屈曲・外転運動に寄与し, 肩甲下筋が大円筋による上腕の内転運動を補助することが示された。