日本野生動物医学会誌
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動物福祉とは何か
石川 創
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2010 年 15 巻 1 号 p. 1-3

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抄録

動物福祉とは何かを一言で定義することは難しい。しかし,一般的には「人間が動物を所有や利用するにとを認めたうえで,その動物が受ける痛みや苦しみを最小限にすること」と解釈することができる。にの定義においては,動物を殺すことは否定しておらず,「殺す場合には可能な限り苦痛のない殺し方をするにと」と考える。動物福祉と類似するが異なる考え方として「動物の権利(Animal rights)」があるが,ここでは「すべての動物は平等であり(ヒトと)同等の生存権を持つ」と考え,適用の範囲は人や団体によってさまざまであるものの,基本的には動物を殺したり食べたりすることを認めていない。動物福祉の対象は産業動物(家畜),実験動物,伴侶動物および野生動物に大別される。動物福祉の指針としては,主に産業動物を対象にした「5つの自由」および実験動物を対象とした「3つのR」が知られているが,その概念は伴侶動物(ペット)や,人が関与し得る限りにおいて野生動物に対しても適用可能である。野生動物の動物福祉に関して,本学会では,「野生動物および動物園動物を対象とする研究活動(収集,飼育,実験を含む)において,対象動物のQOLを確保するための基本原則を定め,さらに自然保護,動物の福祉および適正利用を目指す。」と定め,研究対象とする動物のQOL(Quality of life)の確保に重点を置いている。

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© 2010 日本野生動物医学会
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