日本野生動物医学会誌
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特集
学校教育の現場における野生動物福祉
横畑 泰志
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2010 年 15 巻 1 号 p. 25-29

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抄録

学校教育の現場では,さまざまな形で野生動物を用いた教育活動が行われている。著者は大学の理学部などにおいて継続的にアカネズミの採集と剥製作り,頭骨計測と齢構成の分析を一連の過程として行う学生実験を行ってきた。また,小中学校などでも小型哺乳類の生体や標本,中・大型動物の骨格などを用いた教育活動を行ってきた。こうした教育の中での動物の致死的使用は,知識の伝授だけではなく,被教育者に死について少しでもリアルに考える場を与えるという重要な意義を持っているであろう。著者は実習の場で動物の安楽殺を学生の目の前で実施し,剥製も学生1人当たり1点ずつ作らせるようにしてきたが,それにより使用動物数の削減などが困難になる。大学においてこうした教育活動には動物実験委員会の了承が必要な場合があるが,著者はそのために教育の機会を制限されたことはない。著者はこうした教育の過程を研究活動にも関連づけ,各個体から得られるさまざまな機会を最大限に活用している。こうした動物の多面的な有効利用は,最終的に犠牲になる動物を減らすことにつながるため倫理的である。また,研究上の必要性や動物の生態を考慮して使用後の動物の放逐を行っていない。野生動物の教育使用の可否において最も重要な点は,関係者や社会全般に説明責任を果たせることであろう。

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© 2010 日本野生動物医学会
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