日本野生動物医学会誌
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特集論文
東アジアにおける保全医学的リスクマネージメントの必要性とその展望
齊藤 慶輔
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2011 年 16 巻 1 号 p. 1-4

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抄録

 現在,日本を含む東アジア諸国において,野生動物医学に関する国際交流をより活性化させ,野生動物と人間のより良い共生を目指すことを目的に,各国の現状と問題意識の共有を図ることが強く求められている。第16回日本野生動物医学大会では,各国に存在する野生生物への脅威や,越境する恐れのあるさまざまなリスクに対する各国の取組みへの理解を深め,国際協力ネットワークを構築することを目的に,シンポジウム「東アジアにおける野生動物医学活動のネットワーク化」を開催した。シンポジウムには,中国,韓国,台湾より各1名ずつの外国人演者を招聘し,渡り鳥が運ぶウイルスの確認状況や存在する野生生物への脅威などが紹介された。多くのパネリストが各国の現況について情報を共有することの重要性を指摘し,特に渡り鳥が運ぶさまざまな感染症については,モニタリング項目(ウイルスなど)や対象種について,ある程度の共通項が必要との認識を示した。また,越境する重要感染症などに対処するため,可能な限りリアルタイムで正確な情報交換を行うための体制整備についても,今後早急に確立すべき課題であるとの認識で一致した。

 さらに,渡り鳥のフライウエイに位置する国同士が連携して野鳥の保護活動を行うためには,各国におけるさまざまなリスクをハザードマップ化しておくことが重要である。

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