日本野生動物医学会誌
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原著論文
神奈川県産アズマモグラ (Mogera imaizumii) の消化管内寄生蠕虫相と線虫2種の感染状況の分析
小泉 哲郎野上 貞雄横畑 泰志
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2011 年 16 巻 2 号 p. 121-126

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抄録

2002年5月から2004年4月にかけて,神奈川県藤沢市の日本大学湘南キャンパスで62頭のアズマモグラ(Mogera imaizumii)を捕獲し,消化管内寄生蠕虫相を調査した。条虫類1種,Hymenolepis mogerae,線虫類4種,Ascarops mogeraProtospirura pseudomurisParastrongyloides winchesiTricholinstowia talpaeが得られ,関東地方のモグラ類の寄生蠕虫相の初報告となった。これらの優占的な線虫類2種,すなわちA. mogera およびT. talpae は,負の二項分布を伴う顕著な集中分布を示した。これらの優占的な2種の感染の有無および感染虫体数に影響する因子を,一般化線形モデルで検出した。A. mogeraでは,最適なモデルにおいて,宿主の成熟の主効果が感染の有無に,宿主の齢の主効果および宿主の齢と体重の交互作用効果が寄生虫体数に対して有意に影響していた。T. talpaeでは,最適なモデルにおいて,捕獲季節の主効果のみが,感染の有無と寄生虫体数に影響していた。これらの結果は,単独性や便所の使用のような宿主の社会・行動学的特性や,中間宿主の有無のような蠕虫の生活環上の特性によって説明された。

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© 2011 日本野生動物医学会
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