日本野生動物医学会誌
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原著論文
バンドウイルカにおける精液一般性状および液状保存
竹中 亜紗実柏木 伸幸前園 優子中尾 建子上野 友香柿添 裕香木下 こづえ楠 比呂志星 信彦
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2013 年 18 巻 3 号 p. 107-114

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抄録

本論文では,バンドウイルカ精液の一般性状を検査し,液状保存精液の比較を行った。精液は5 頭の雄から採取し,pH,精液量,精子濃度,総精子数,運動性,生存率および形態異常率を検査した。精液はBiladyl,EYC またはBF5F を用いて液状保存を行い,運動性および生存率を連日検査した。 新鮮精液一般性状において,精液量を除いて分画差はなかった。しかしながら,精子濃度と生存率との間に負の相関がみられた(r=-0.539, p<0.01)。十分に性成熟した雄または同一施設内で飼育されている高い妊孕歴をもつ雄は,精子濃度が高く,生存率は低かった。季節差はみられなかった。 運動性は,EYC およびBF5F で希釈した精液において2 日間保存された(p<0.05)。生存率は全ての希釈液において7 日間を通じて高い値を示した。加えて,精漿除去精子では,運動性は液状保存後から低下した(p<0.05)。これらの結果から,1)生存率は年齢または妊孕歴(社会的順位)に影響されること,2)飼育下バンドウイルカの精液は周年を通じて採取が可能であること,3)EYC およびBF5F がバンドウイルカ精液の短期保存に有用であること,4)精漿成分がバンドウイルカ精液の液状保存に有用であることが示唆された。

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© 2013 日本野生動物医学会
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