日本野生動物医学会誌
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特集論文
種の保存のための動物輸入時の検疫
松本 令以
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キーワード: 検疫, 種の保存, 動物園
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2014 年 19 巻 4 号 p. 113-116

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抄録

動物園は,種の存続や将来の野生復帰のために絶滅の危機に瀕した希少動物を生息域外で飼育し,遺伝的多様性を確保しながら計画的に繁殖に取り組んでいる。このいわゆる種の保存のために,世界中の動物園がネットワークを形成している。国境を越えて動物園間で飼育動物を移動させる際には,感染症の管理が重要な課題となる。各国の動物衛生当局により,国ごと,動物種ごとに必要な輸出入検疫の条件が定められており,海外から日本国内に動物を輸入する際には,感染症法,家畜伝染病予防法,狂犬病予防法に基づき,農水省動物検疫所により法定検疫が行われる。例えば霊長類を輸入する場合,感染症法に基づき,エボラ出血熱およびマールブルグ病を対象とした30日間の検疫が,相手国の出国時(輸出検疫),日本への入国時(輸入検疫)にそれぞれ必要となるが,動物園で飼育される霊長類の検疫が実施できる施設は国内では限られている。海外の動物園と連携した種の保存を実現するためには,輸出入に伴う法定検疫が障壁となりがちである。今後は,多様な動物園動物を飼育可能な検疫施設の整備や,種の保存を想定した法令の整理などが必要と考えられる。

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© 2014 日本野生動物医学会
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