2004 年 9 巻 2 号 p. 119-123
オランウータンの成獣と分娩直前の胎子の死体を用いて,股関節の構造をCT断層像で非破壊的に観察し,さらに成獣では肉眼解剖を行った。CT画像から,胎子も成獣同様,大腿骨頭靭帯を備えていないことが明らかになった。オランウータンの大腿骨頭靭帯は少なくとも分娩直前の胎子で完全に消失していると結論づけることができた。肉眼解剖の結果,成獣において腸骨大腿靭帯の2つの部位,貧弱な恥骨大腿靭帯,そしてよく発達した坐骨大腿靭帯が確認されたが,これまでの報告と合致して大腿骨頭靭帯は存在しなかった。CT像は非破壊的に股関節の構造を確認する上で,有効な方法であると結論できる。