ATPは、「エネルギーの通貨」として細胞内で様々な生理機能に関与するとともに、細胞外においても「情報伝達物質」としての役割をもつことが明らかにされている。我々は、細胞外ATPが味蕾において情報伝達物質として機能していると推測している。現在、RT-PCR、免疫組織化学、in situ hybridizationなどの手法を用いて、味蕾におけるATP受容体の発現について検索をおこなっている。P2X4受容体は一部の味蕾細胞に発現していること、そしてP2X7受容体が味蕾内の神経線維に発現していることがわかった。このように複数のATP受容体サブタイプが味蕾内で神経・細胞の両者に発現することは、細胞外ATPが味覚情報伝達において重要な情報伝達物質としての役割をもつことを強く示唆するものと考えられた。