九州歯科学会総会抄録プログラム
第66回九州歯科学会総会
セッションID: O-21
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上顎洞底部形態と上顎洞嚢胞
*上橋 陸海小林 繁
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抄録

上顎洞嚢胞は上顎洞の腺組織からの分泌液貯留による嚢胞の総称で内容液の性状によって、上顎洞漿液[水様]嚢胞、粘液嚢胞、膿嚢胞に分類されるが、実際には漿液[水様]嚢胞を意味することが多い。臨床では歯科治療の際、オルソパントモグラムにおいて明瞭なドーム状のX 線不透過像として散見され、その病的意義は歯の違和感や疼痛等の臨床症状によって対応は異なり、無症状の場合は経過観察となることが大半である。上顎洞には洞底部が歯根と遊離した Free type や洞底部が類円形や平坦な形態を呈し、歯根と近接するcontact type、洞底部に凹凸が見られ、洞底部の下方突出が歯根との間に存在する convexity type がある。今回は臨床症状を伴う上顎洞嚢胞と上顎洞底部形態について観察した。資料は鹿児島市立病院において臨床的に得られた上顎洞嚢胞 24 例のオルソパントモグラムである。撮影に用いた装置はアサヒレントゲン工業製 AZ3000CMである。方法は上顎洞に発症した嚢胞と洞底部形態についてオルソパントモグラムを比較し、検討した。Free typeの上顎洞嚢胞7例、Contact type上顎洞嚢胞8例、Convexity type上顎洞嚢胞9例であった。Free type上顎洞嚢胞の疼痛等の症状は3~4週間で消失したが、 Contact type上顎洞嚢胞2例、Convexity type上顎洞嚢胞7例は嚢胞が巨大なため症状消失は見られなかった。そこでContact type上顎洞嚢胞2例、Convexity type上顎洞嚢胞7例に嚢胞摘出術を実施した。Convexity type上顎洞嚢胞7例は歯根と歯根の間の上顎洞底下方突出部から発症していた。これが嚢胞摘出術を要した上顎洞嚢胞がcontact typeよりconvexity typeの洞底部形態に多くみられた理由であると思われる。

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