歯科臨床において、対合歯や隣接歯の修復に異種合金を用いると、それらの接触がガルバニ腐食やガルバニショックの原因になる。演者らは、チタンと歯科用合金が乳酸水溶液中で非接触状態で共存した場合の腐食挙動を調べて、合金単独での浸漬およびチタンと接触して浸漬した場合と比較した。チタンとの共存(接触・非接触)で、金合金、白金加金は溶出挙動に影響がなく、金銀パラジウム合金では、Agの溶出抑制、Cuの溶出促進がみられた。銀合金は単独でもAg、Zn等の溶出が著しかったが、チタンとの共存で明確な影響はなかった。コバルトクロム合金は、共存でCoの溶出促進がみられた。チタンからのTiの溶出は、銀合金との共存で抑制、白金加金では変化なし、他の合金では、溶出促進の傾向がみられたが、接触と非接触で有意差はなかった。非接触でも接触と同じく合金の腐食が起こりえるため、臨床で同一口腔内に異種合金を使用する場合は、部位が離れていても慎重に合金を選択する必要があることが示唆された。